水嶋ヒロ氏が考える住まいと生活と人生の設計図

国内だけでなく、幼少期はスイスで過ごした経験を持つ水嶋ヒロさん。 これまで、「人生の節目といえるタイミングで移住を決めてきた」と話す彼にとって、住まいとはどのような存在なのでしょうか。 今までほとんど語られなかった住まいについての経験や選択を聞くうちに、彼が大切にしてきた生活哲学やライフスタイルの一端が伝わってきました。 もしかしたら、あなたにとっての「豊かに暮らす」ヒントも見つかるかもしれません。

これまでの転居のきっかけは
“ちょっと背伸び”をするため

ーいきなり本題です。水嶋さんにとって「住まい」とは何ですか?

そうですね、ライフスタイルを司る中心というか、自分にとっては生活のフォーマットのようなものですね。基盤となる住まいに歪みがあると、生活していくうえでの色々なところでノイズが出てくるというか。逆にフォーマットである住まいがきちんと設計されていれば、自然と暮らしがいい方向へ向いていくと思っています。

たとえば僕は娘が生まれるときに、まず彼女にとって最も良い環境は何かを考えて、部屋の割り当ても変えました。別室で1人寝のトレーニングを始めるために、生活の動線を踏まえてどうすれば娘にストレスを感じさせずに過ごせるか。事前に計画を立てて、環境をガラリと変えました。

その結果娘は生後2~3ヵ月頃から、12時間たっぷり1人で眠れるようになりました。そうなると家族全員も睡眠をきちんと取れて、皆が気持ちのよい朝を迎えられるようになるんですよね。だから、「生活設計のためにどう住まうか」は、ライフスタイルの質に関わる本当に大切なことだと思うんです。

ー住まいを「生活のフォーマット」として、大切に考えるきっかけは何でしたか?

いつ頃からそう考えるようになったかはよく覚えていません。ただ、実家は転勤族だったこともあり、幼少期に頻繁に住環境が変わる経験をしたことは、その後の自分の価値観形成に大きな影響があったかもしれません。小学校時代はスイスで過ごしたのですが、「国境を越えるとこんなにも文化が違うのか」と当時は相当ショックを受けましたね。食事や生活習慣だけでなく、遊び方や会話内容も違う。またその後日本に帰国したあとも、横浜から東京へ引っ越してひとり暮らしを始めたときは刺激が多くて、同じ日本でもまるで街並みやそこに集まる人が違うので、またショックを受けました。「どこに住むかは、どう生きるかと似ているな」ということは、その頃からすでに肌感覚として根付いていたのかもしれません。

ー大人になってから自分の意思で住まいを変えることになったとき、何を基準に選びましたか?

高校卒業と同時にひとり暮らしを始めたのですが、それからずっと、自分にとって少し背伸びしたところを選ぶことを大切にしてきました。横浜の長津田から世田谷の三軒茶屋に移住するときは、歴史のある個人商店もあれば若者向けの喫茶店など色々なお店がギュッと集まっている街の空気感に憧れて、「ここなら楽しい生活ができそうだな」と思って決めました。それで東京の楽しさに味をしめちゃって。その後モデル業を始めたばかりのときは、自分が好きなファッションと生活の関係を近くしようと青山に移り住みました。大学1~2年の頃だったかな。

ー大学生で、青山でひとり暮らし?

ええ、根津美術館の近くで、まだ学生だった自分には決して安くない家賃でしたよ。でも、「給料の大半を払ってでも俺は青山に住むんだ」って周囲の友人には話していましたね。ちょっと格好つけた言い方ですけど、住むところはステップアップに向けた自分への投資でもあると思うんです。家賃は高くても、そうやって背伸びすることが成長につながると当時から考えていたので。

自宅を出て、季節毎に変わる華やかなショーウィンドウを眺めながら仕事へ向かう。自分にとって仕事と生活の関係が近い、今まで経験したことがないくらい刺激的な毎日でしたね。

ーその頃から職住近接の生活を実践していたんですね。プライベートと仕事の境目は当時からあまり意識していなかったと。

俳優業を中心に活動していた頃は、自分は普段の生活から役に入り込むタイプの役者でした。だから、どうにかスイッチのオン/オフを作ろうとしていました。自宅ではなるべく仕事のことを忘れようとして。

でも今は、ライフスタイルのなかに仕事というカテゴリがある感じで、その境界線はほとんどありません。仕事と生活の境目を作る方が無理をしている感じがするし、「自分にとって偽りのない仕事」ができると思っていて。

ー偽りのない仕事?

たとえばじげんさんでは、「豊かに暮らすためにはどうすればいいか」を提案するCLOという立場でお仕事をさせてもらっていますが、そんな自分のライフスタイルが無茶苦茶で乱れたものだと、伝えるコトにも嘘が生まれてしまいますよね。今はとくにそういう表面的な装飾はすぐ見抜かれて、受け手にとっても刺さらない時代だと思うんです。なので、僕は「仕事だから○○を作る」「生活だから○○を選ぶ」という区別はなるべくしないようにしています。

……あの、ちょっと真面目に話しすぎですか?(笑)

毎朝4時に起床して作業
住居だけでなく住まい方で生活の質を変える

ー水嶋さんは会社を経営されていますが、自宅で作業をすることもあるんですよね? お子さんがいるなかで、どうやって時間を見つけて仕事をされているのですか?

僕、別に仕事をするために特別部屋にこもって仕事とかしないんですよ。というのも、僕の場合は子どもが寝たあと21時頃には寝て、毎日朝4時に起床してリビングで仕事をしています。リビングで周りに家族がいるなかでも、集中力のスイッチを自然と入れることができるし、そこに関して大きな不便を感じることはないんですね。だから、今日のインタビューも自分にとって昼くらいの感覚で(笑)(※編集部註:この取材は午前8時30分開始だった)。

あと子育てが忙しいといっても、皿洗いやおむつを替えているときなど、頭のなかで仕事のことを考えるすき間は生活のリズムのなかで、意外とけっこうありますからね。

ーよく集中できますね。

「自分の部屋がないと仕事に集中できない」という人もいるし、そればっかりは人それぞれ得意不得意があると思います。ただ、住空間が限られがちな都心部の場合、ハコとしての間取りも大切ですが、スペースの使い方にせよ時間の使い方にせよ、そのなかで「どう自分の生活にフィットするように住まうか」が大切というか。あるいはそんな堅苦しい言い方は抜きにして、単純にそれを組み立てていく過程が楽しいと思うんです。

ー理想の住まいは?

難しいですよね。理想の住まいの形って、ライフステージによって変わるものじゃないですか。たとえば主語も自分ではなく、「家族」になる。そう考えると、今は娘を中心として家族にとって一番良い住環境が、理想の住まいですね。

家具を選ぶのも好きですが、格好良さやオシャレかという尺度よりも、大切なのはそれが家の中にあって、リラックスできるかどうか。今は自分の部屋にいるよりも、リビングで家族全員の状況が見えるさりげない椅子があるのですが、そこに座ってくつろいでいるときが一番落ち着きますね。

ー将来住んでみたい場所はありますか?

当然本人次第だし、まだ数ある選択肢のなかのひとつですが、もう一度スイスに住んでみるのもいいかなと思っています。というのも、娘の教育環境を考えると、僕が住んでいたスイスのある街は色々な人がいて、街や建物にゆったりとした空間があり、今振り返るととても良い生活空間だったなあと思うんですね。世界各国の色々な人がいるその街では、たくさんの価値観に接する機会もあります。できるだけ娘に多くの選択肢を提供してあげたいと思う親としては、魅力のある街だなと素直に思います。

なので感覚としては自分が育った郷里に帰るというよりかは、娘と一緒にスイスで生活をしながら、家族全員とステップアップしたい、というスタンスかもしれません。

自分にとって大切なものは何か
住まい選びを経ると見えてくる楽しさ

ーこのWEBマガジンの「ミノリノ倶楽部」は、リノベーションを通じて住まいの選択肢を提案していく媒体です。水嶋さんが考えるリノベーション物件の魅力とは?

自分らしい空間を作ったり選んだりすることができるのは、凄く魅力的ですよね。とくに「こういう暮らしを形作りたい」とライフスタイルを重視する人にとっては、有意義な選択肢になるかもしれませんね。

そもそも誰かと一緒に住む場合、住まい選びって、自分たちにとってのプライオリティを整理することだとも思うんです。住むエリアから始まって家具や空間の使い方など、お互いにライフスタイルについての価値観をすり合わせる作業にもなるし、自分自身にとっても何を大切にしたいか再認識するきっかけにもなる。たとえば友人の自宅に遊びに行くと、その人の趣味や几帳面な性格とか、すぐに分かるじゃないですか。

僕の場合は「シンプルでなるべく無駄な物を置かない生活」という価値観を最初に妻と共有できたので、その後の住居選びはスムーズでした。リノベーションと一括りにいっても物件によって立地や屋内の表情もさまざまだと思うので、その住まい選びのプロセスも含めて魅力のひとつかもしれませんね。

ー水嶋さんはこれまで数多くのステージプロデュースを手がけてきただけでなく、じげんのオフィス移転プロジェクトでも、デザイン監修や空間演出を担当していただきました。水嶋さんの考える「リノベーションのコツ」はどんなものでしょうか?

具体的なソフト面の話はまた別の機会にお話するとして、個人的にはそこで生活する時間が一番長い人の目線で設計するのがいいのかなと思います。旦那さんなのか奥さんなのか、あるいはお子さんなのか。家族構成やライフスタイルによってそれぞれだと思いますが、「生活と地続きの意見」は確かですよね。

キッチンからの目線やベランダのちょっとしたスペースなど、そこに住む時間が長く、生活と住まいの距離が近い人にしか見えてこないものがあると思うので。

ーミノリノは「東京近辺」を中心に物件を紹介しているサービスです。一方で、近年は地方移住が注目を浴びる機会が増えていますが、今あらためて東京で生活するということを考えるにあたって、水嶋さんの意見を教えてください。

ファッションもグルメもカルチャーも、手が届く範囲に全部揃っている街が東京ですよね。気の利いた答えではないかもしれませんが、その利便性こそが最大の魅力だと思います。

ただ、言葉を加えるとすれば、利便性が高いということは色々な価値観に触れるチャンスが多いということではないでしょうか。それこそじげんさんが定義する、「人々がより良く生きるための選択肢」である生活機会の豊かさは、日本では東京が段違いなのは間違いないと思います。

あと一緒に仕事をする自分のチームスタッフは、なぜか全員が東京出身ではないんですよね(笑)。全国から色々な人が集まってくる多様性や価値観の幅広さとか、それを受け入れる懐の深さみたいなものも、東京の魅力なのかもしれませんね。


<リノベーション物件ならミノリノ>
https://menoreno.jp/

次回告知
第2回目のインタビューでは間取りやインテリアなど、現在の住まいで水嶋さんがこだわっているポイントについてお訊きします! お楽しみに。

<人物紹介>
水嶋 ヒロ(Hiro Mizushima)
1984年生まれ、東京都出身。2005年より俳優として数々の話題作に出演。日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。近年では、語学を活かし米国ドラマ「Girls」(HBO製作)に出演するなど、海外でも活躍の場を広げている。株式会社3rd i connections代表取締役社長。株式会社じげんCLO(Chief Lifestyle Officer)。magellan resorts & trust 株式会社Branding Director。

<撮影協力>
取材・文:田中 雅大(ペロンパワークス)/撮影:MEGUMI(DOUBLE ONE) /スタイリスト:徳永 貴士
衣装:Lift etage
バイカージャケット¥185,000、パンツ¥137,000/m.a+
Lift etage (03-3780-0163) 東京都渋谷区代官山町16-5 #101

<今回のロケ地>

T.Y.HARBOR
https://www.tysons.jp/tyharbor/
東京都品川区東品川2-1-3
03-5479-4555

<表参道CICADA(シカダ)> 半世紀前に有名建築家により建てられた社員寮 をホテルなどを手掛けるデザイナーがリノベー ションしてつくられた地中海料理レストラン。同デ ザイナーは同社(タイソンズアンドカンパニー)が プロデュースする系列店青山CRISTA、原宿 SMOKEHOUSEなども手掛ける。

<青山CRISTA(クリスタ)> ​青山​通りを一本入った路地にある隠れ家のようなレストラン&バー。 ​​無垢の木を一面に使い、レザーや植栽 など、ナテュラルな素材をふんだんに 取り入れたクラシックでありながらクラ フト感溢れる上質な空間。 ニューヨーク出身のシェフによるシーフードやグリル料理が 楽しめる。​

<原宿SMOKEHOUSE(スモークハウス)> 原宿キャットストリートに佇む本格アメ リカンBBQレストラン。スモークの芳醇 な香りが広がる橙色の照明に照らされ た木目の美しいウッディなインテリア。

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